身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
自室に戻ると、琴音はベッドの上に身を投げ出した。枕を引き寄せて、強く抱きしめる。頭の中が混乱して、何をどう考えればいいのかわからなくなった。
可乃子は、あんな言い方をする人だっただろうか。ただ、そう、いつも優しかったけれど、なんとなくずきずきと痛むことが多くなって、家の中でもあまり近寄らなくなったまま、そのうちどちらも家を出た。
無難に言葉を交わすことが増えて、家を出た後はよほど必要がなければ連絡をとらなくなって、今日に至る。
あの時は気がついていなかったけれど、今日は明らかな棘を感じた言葉たち。可乃子はもしかしたら、琴音のことがあまりすきではなかったのだろうか。もしかしたら、昔から。
嗚咽が混じりそうになって、枕に顔を押し付ける。隣は可乃子の部屋だ。泣いたら聞こえてしまう。
可乃子の態度はショックだった。だけど何より、言われた言葉が頭を離れない。
――琴音は、私の周りのものなら何でも欲しがって癇癪起こすから。
まるで、子供の頃の癇癪と同じように、閑を欲しがっているのだと言われた気がした。
――閑は優しいから。
子供の頃は、それで良かった。可哀想だよって言って振り向いてくれたら、優しく頭を撫でてくれたら嬉しかったはずのことが、今はひどく、痛い。
恋人らしいやりとりをして、キスをして、気持ちは近づいていると思っていた。これから少しずつ、気持ちを育てていければ良かった。そのことに何も変わりはないはずなのに、可乃子に言われた言葉がずっと、心の奥に棘となって突き刺さったまま、消えてくれそうになかった。