身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~


 ――大きくなったら、琴音のお嫁さんになって。

 お嫁さんにして、ではなく、お嫁さんになってと言われて、面食らった。聞けば、結婚イコールお嫁さん、ということだと幼稚園で聞いてきたらしく、そうしたらずっと一緒に遊べると思ったらしい。

 ――お姉ちゃんやお父さんお母さんには内緒にして。

 どうして、と聞けば、やっぱり泣きそうな顔をして、琴音が欲しいものは全部お姉ちゃんが持っていってしまうから嫌だと言った。

 子供心に、姉にかけられる愛情との比率の違いを明らかに感じ取っていた琴音の、精いっぱいの自己主張だったのだろうと、大人になった今ならよくわかるのだが。

 当時はひたすら、可愛らしい生き物に懐かれた上に、嫁入り先が決まったと可笑しくて笑ったのを思い出す。



「閑! 聞いてるの?」

 可乃子と琴音、ふたりと会うこともなくなって、もう随分と年月が経つ。いつのまにか年も三十を数え、結婚を急かす声もうるさくなってきた。それは主に、後継を遺すという教えを祖母から忠実に受け継いだ母親から。

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