身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
たまに実家に戻れば、母の優子は結婚結婚とうるさく、閑はその大半を聞き流していた。いつまでも決まった女性を作ろうとしない閑に焦れているのは、ひしひしと伝わっているけれど。
「ちゃんとしたお相手がいるなら、紹介しなさいと言ってるの。そうじゃないなら」
いつもは正月に帰るところを、なぜか年末に呼び出されたかと思えば仏間にて対面した優子はにこりと笑った。爺様を一番端に、ずらりとならんだ代々ご当主の遺影の下で。
「染谷の姉妹に会いなさい。あちらからも、そろそろあのお話を実現させてもいいんじゃないかと言ってきてるのよ」
――染谷の姉妹。
その言葉を聞いた途端に、薄れかけていた子供の頃の夏が、色鮮やかに脳裏に浮かんだ。
上座に座る父はこれまで母が閑の結婚について話していても、何か意見を言うことはなかったが。
「……まあ、そろそろ頃合いだろうな」
ぼそりとそう呟いて、湯飲を手に取り茶を啜る。
「そうでしょう! あなたもそう思うわよね!」
母は同意を得て諸手を上げて喜ぶが、父が言いたいのは主に会社においての染谷の在り方だろう。
――染谷との取引は二宮にとって、最優先すべきことでもなくなってきている。そろそろ、親戚含め重役たちからも進言がありそうだった。染谷にこだわらず、もっと会社にとって有益な取引先を選ぶべきだと。