身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 この時になって初めて幼い初恋を意識して、同時に失恋してしまったようなもので。こっそりとベッドの中で泣いて忘れた。
 
 それきり会うこともなく、家族で二宮家のことが話に上ってもあまり会話に寄らないようになって、月日は流れる。大学入学と同時に一人暮らしを始めれば、思い出すこともそれほどなかった。
 数年前に可乃子からの連絡で近況報告をしあった時に、別れたということは聞いていたが、だからといって再会する機会があるわけでもなく。

 たった一度の付き合いが終わってから恋愛からすっかり遠ざかった琴音からすれば、正月に実家に戻って聞かされた話は寝耳に水であり、ふたりの母親を目の前に怒涛の展開に巻き込まれた。聞かされたのは、ただ祖父同士の仲が良かっただけではなかったらしい、二宮家と染谷家の事情というやつだった。


* * *


「琴音、聞いてるの?」

 とん、と隣に座る母親から肩を叩かれ、現実に引き戻される。目の前には閑とその母親が座っていて、コース料理はもうラスト、ドルチェとコーヒーをいただいているところだ。

「あ、ごめんなさい。大丈夫です。聞いてます」

 慌ててそう言ったが、数秒ぼんやりしてしまって実は聞いていなかった。母親は半目で琴音を睨んでいたが、にっこり作り笑顔を返せば諦めたようにため息を吐き、なぜか椅子から立ち上がった。

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