身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

「行きましょうか。新郎様がお待ちですよ」
「はい」

 琴音が慣れない装いでも立って歩きやすいように、手を差し出してくれる。その手を取って、立ち上がる。小柄な人で、今までの琴音ならきっとまた背を丸めて小さくなっていた。だけど、琴音は意識して背筋を伸ばす。
 控室を出てすぐのところで、グレーと黒のタキシードを着た閑が待っている。琴音を見て、眩しそうに目を細めた。
 スタッフの手から琴音の手を受け取り、その手に唇を寄せる。

 ――本物の王子様みたい。

「綺麗だ」

 その言葉に、うっとりとして目を伏せた。
 子供の頃、閑に抱いていた優しい王子様のイメージを思い出す。子供なりに、色々と妄想していたような気がする。はっきりとは思い出せないけれど。

 ――まるで、夢みたい。

 幸せな結婚だ。たとえ、誰に何を言われようと。


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