身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 披露宴は滞りなく終わり、ゲストにひとりひとり丁寧に礼を告げながら見送った。ドレスを脱いで、式の前に来ていたオフホワイトのワンピースに着替えるとそれでやっと何もかも終わったような気がして、肩の力が抜けた。

 今夜はこのままこのホテルに泊まって、明日からは新婚旅行の予定だ。閑の仕事の関係もあって、行先はドイツと決められていたけれど、海外には高校の修学旅行でしか行ったことのない琴音は楽しみにしている。

 控室を出ると、閑がスーツを着て待っていてくれた。すぐに近寄って、琴音の腰に手を回す。

「……お疲れ様」
「閑さんも」

 今日からこの人は自分の夫で、自分は妻なのだ。そう思うと、目を合わせるのもやたらと照れくさい。式と披露宴の間は、そんなことを感じる余裕もなかったけれど。

「お義父さんとお義母さんは?」
「帰ったよ。二宮も染谷も。部屋で休んで、それから食事にでも行こうか」

 朝から式のリハーサルと本番、昼からは披露宴。一日が怒涛のように過ぎ去った。花嫁はあまり食べられないものだと聞いていたが、披露宴の席で閑が色々と気を使って食べやすいよう世話をしてくれたので、案外きちんと食べられた。それに何やら胸もいっぱいで、だから食欲はまったくない。

「うん。……でも、あんまりお腹が空いてなくて……閑さんは?」
「ああ、俺も、実は。結構飲まされてしまって」
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