身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
琴音の身体を自分の足の間に置いて、けれど閑は本当に何もしない。ただ琴音の肩や首筋に浴槽の湯を手で掬ってかけている。
「何もしないって言ってるだろう。もっと力を抜け」
警戒する琴音に、閑はくすりと笑った。
「酒を飲んでる状態で、長湯させたら危ないだろう。本当に何もしないよ」
言いながら、また琴音のうなじにとろとろと湯をかける。それで琴音はやっと身体を楽にした。
浴槽に浸かりきれない首筋や肩に、そうやってお湯をかけてもらうのはとても気持ちがいい。されるがままになりながら、琴音は結婚してからずっと思っていることをぽつりと呟いた。
「あんまり、無理しないでくださいね」
「無理って?」
閑が不思議そうに尋ねてくる。琴音は、言い辛く一瞬口ごもる。なんて言えばいいのだろう。
「その……自然に、でいいんですよ?」
「……自然にしてる」
いや絶対自然じゃない、と琴音は心の中で突っ込んだ。結婚した直後からこんなに豹変するのは、どう考えてもおかしい。
◇◆◇◆◇
隙間の目立つクローゼットも、休日のたびにふたりで買い物にでかけ、琴音の服がいくらか増えて少しはマシになっただろうか。
だから、というわけではないのだが。
「琴音? もしかして体調が悪い?」
土曜は閑さんが仕事で、日曜の休日。ちょっと足を延ばして郊外のショッピングモールに行く予定にしていたのだが、やめて家でのんびりしないかと琴音が言えば、閑が心配そうに眉を顰めた。