身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
――お姉ちゃん、やっぱり閑さんに連絡してた。
頭に血が上って、混乱する。足が動かなくなった。寝室からは、まだ閑の声が続く。
「ああ、わかってる。俺の時間が合わないんだ、少し待ってくれ。琴音はまだ不安定だし」
私が安定したら、会うってこと? 誰と誰が?
冷静に考えれば、もう今更、閑と可乃子がどうにかなるなんてことはないとわかっている。閑はそんな無責任な人間ではない。
けれど、可乃子はどういうつもりで連絡してきているのか、それが琴音には信じられない行為だった。
普通に考えれば、琴音との仲を取り持って欲しいから、それが理由だろう。しかし、考えてしまう。それを、口実にしているのかもしれないと。
可乃子があれほど、琴音に対して棘のある態度を取ったのは、本当は閑とよりを戻したかったからじゃないのか。それなのに、縁談で既に名前が挙がっていたのが琴音の方だったから。
可乃子は、物怖じしない明るい性格で優秀で誰に対しても人当たりが良い分、プライドも高い。気づく人は少ないかもしれないが、幼い頃から知っている琴音はよく知っている。だから琴音が閑と結婚すると決まったあとに、可乃子は本音を言えなくなったのかもしれない。その分感情の折り合いが付かなくて、こんなことになったんじゃないだろうか。すべてはただの、予測だけれど。
ぎゅっとお腹の上で手を握り合わせたとき、寝室の扉が開いた。いつのまにか電話が終わっていたらしい。