身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
理由なんて、それを琴音の口から言わせるのか、と思いながら琴音は笑みを顔に張り付けた。
「お姉ちゃんはなんて言ってた?」
「謝りたいことがあるらしい。喧嘩したのか?」
喧嘩。可乃子はそう言ったらしい。だが琴音が思うに、あの夜可乃子と話したことは、喧嘩というよりも可乃子が何か、琴音に対して初めて隠していた本音をチラつかせたように思えた。自分は、それに驚いて怖気づいてその場から逃げ出したのだ。
――だけど、ちゃんと話さなきゃ。
琴音にだって、言いたいことはある。その内容は当然閑に関することで、そうなると閑と可乃子の過去にまで話が及ぶことには違いなく、ずっと避けてきたけれど。
可乃子が閑に、こっそりと連絡を入れるよりはずっといい。
「喧嘩ってほどではなかったんだけど……私がちょっと拗ねて話したくなかっただけ。ちゃんと仲直りするよ」
そう言って誤魔化そうとしたが、閑が訝しく眉根を寄せる。
「琴音はそんなことで何日も連絡を無視したりしないだろう」
あまりにもきっぱりとそう言われたので、琴音は目を見開いて返す言葉に迷った。琴音がそこまでするからには、よほどの理由があるのだと信じている、閑はそんな顔だった。
「お姉ちゃんだからつい甘えた態度に出ちゃったの。ちゃんと会って話すよ、私から連絡する」
琴音と可乃子の仲違いのことなんて、閑絡み以外にないだろうに。閑がそこに考えが及ばないのは、二人が付き合っていた過去を琴音は知らないと思っているからだろうか。
――本当に、それだけ?
初めて認識した微かな違和感。その正体をつかみかけて、琴音はいやまさかと考えを振り払う。
プライドの高い可乃子が、そんなことするはずがない。