身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 閑は数秒、じっと琴音の表情を見つめていたが、「わかった」と頷いた。

「会う時は言ってくれ。時間を作る」

 それは悪いから、と言っても閑は絶対譲らないだろう。琴音は笑って頷いたが、可乃子とはふたりで会おうと決めていた。



 可乃子にメッセージを送り、琴音も一度直接会いたいと思っていると告げた。すると、仕事の後で家まで行くから閑の帰りが遅くなる日を教えて欲しいと返事があった。
 可乃子も、閑のいないところで会うことを望んでいるらしいとわかり、心臓がばくばくと跳ねる。きっと琴音が覚悟を決めているように、可乃子もそうなのだ。きっと穏やかな話にはならない。
 会うことを考えると、きゅうとお腹の奥が軋むように痛くなる。吐き気まで戻ってきそうだった。

 約束当日の朝。玄関で仕事に行く閑を見送っているときだった。

「可乃子とは、いつ会うか決まったのか?」

 どういう勘の良さなのか、閑に尋ねられて思わず笑顔で固まってしまう。

「可乃子からの連絡がぱたっとなくなったからな。決まったのかと思ったんだが」
「あ、うん、えっと……まだ。お姉ちゃんの日程がはっきり決まらなくて。でも、会おうねって約束はしたよ」

 咄嗟のことで、どう答えるべきか言葉が出ない。聞かれた時のために言葉を用意しておくんだったと後悔したが、閑はそれ以上琴音に詰め寄ろうとはしなかった。

「そうか」

 くしゃりと琴音の頭を撫でて、閑は出社していった。

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