身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
夕方、六時。もうすぐ可乃子が来るはずの時間だ。
可乃子に対して、嫌だと思ったことを全て言おうと思った。そして可乃子が琴音の何を嫌っているのかちゃんと聞きたい。今、可乃子ときちんと話をしておかなければ、きっとこの先琴音は安心して妊娠期間を過ごせない。もちろん、出産してからも。
ソファに座って可乃子が来るのを待つ間、緊張から胃がしくしくと痛み始める。深呼吸をして、気持ちを落ち着けた。
――あんまり気を張り詰めるのは、赤ちゃんに良くないんだろうけど。
「大丈夫、頑張るからね」
落ち着いて、話をして、可乃子との憂いを無くして、安心してこの子を産みたい。関係に影を落とした両親なんて、この子が可哀想だ。
しんと静まり返ったリビングにインターフォンの音が鳴り響いたとき、琴音の緊張はピークに達した。
これまで、可乃子に正面切って喧嘩など打ったことはない。子供の頃は泣いて困らせることはあったけど、喧嘩にもならなかった。だからだろうか、痛い程に心臓は跳ねていて、玄関扉を開ける手は震えた。
「……いらっしゃい、お姉ちゃん」
怖い顔をしているだろうか。それとも、実家で会った時みたいに、嫌な顔をしているだろうか。
そう思っていたのに、可乃子はどこか、気まずそうにしていて、そんな姉を見るのは琴音は初めてのような気がした。