身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
可乃子は、一瞬狼狽えたような顔をする。どうして、今日の姉はこんなに殊勝に見えるのだろう。だがそれを気遣う余裕は、琴音にはない。
「どうしてって……琴音に連絡を取ろうとしても相手にしてくれないから」
「別に、滅多なことで連絡取らないのなんて今までもそうだったじゃない」
自分で驚くくらいに、冷たい声だった。
姉と話すのが苦しくなったのは、閑と可乃子が付き合っていると聞いてからだ。可乃子はその後も、図書館だけでなくふたりで遊びに行ったことなど聞いてもいないのに琴音に話した。更には、図書館で会った男の子は彼氏なのかと囃し立てた。
そういった会話が苦痛で、琴音から距離を置いた。それを今更、何を気にして閑に連絡するまでになったのか。琴音には、やはり嫌な意味にしか取れなかった。
そんな琴音の感情が、声にも感情にも出ていたのだろう。殊勝だった可乃子の表情に、わずかに険が浮かぶ。
「……そうだけど。琴音が妊娠したって聞いたから、お祝いが言いたくて。それから、ちゃんと仲直りもしたかったのに、琴音がいつまでも冷たいからでしょう?」
「だからって、お姉ちゃんから閑さんに連絡するのは止めて。普通、誰だって嫌がることだと思う」