身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「なんでもって……」
「なんでもでしょ! お父さんだってお母さんだってお姉ちゃんのことばっかりで、私が何言っても無関心だった! お姉ちゃんはやりたいって言った習い事も欲しいものも、強請ったらなんでも手に入れられて、たまにお姉ちゃんが私にお下がりくれたよね!」
子供の頃からの鬱憤が、あふれ出す。それは、言っても仕方のないことだから、いつのまにか諦めてしまった感情たちだった。
「それがどんなに惨めかお姉ちゃんわかってない! 欲しいのはものじゃなくてお父さんお母さんにこっち向いて欲しいのに、物だけ欲しいわけじゃないってお姉ちゃんにはわからない!」
「何よ、余計なことだったって言いたいの?」
「違うよ、違うけど……!」
そうじゃない。可乃子にそうやって構ってもらうのも嬉しかった。だけど、それだけでもない、どうしようもない感情の問題。
嬉しいけれど、寂しさも倍増する。だから大きくなるにつれて、言わなくなった。欲しがらなくなった。可乃子に頼ることはしなくなった。
欲しいと思ったものはいつも可乃子のものになる。きっとそう、心の根っこに染みついてしまっているから、可乃子が近づくのが怖いのだ。
「違わないでしょ? 琴音はそうやって昔っから私のこと妬んで、私だって琴音のことは可哀想だと思って気を使ってたのよ!」
「上から目線止めてよ! そういうところが嫌だから、お姉ちゃんと話さなくなったんじゃない!」