身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 お互いの声が徐々にヒートアップする。自分が頭に血が上っているのはよくよくわかっているが、それ以上に可乃子の顔も真っ赤になって感情的な言葉の応酬になっている。

「……上から目線?」

 ぐっと可乃子の拳にぐっと力が入り、声が震えた。

「年上なんだからいいでしょ? 琴音は私が羨ましいってばかり言うけど、お父さんとお母さんが構わない分、自由にしてたじゃない。私が楽にやってたと思ってんの? 長女なんだからしっかりするのが当たり前みたいに言われてきたのは私。ぼんやりしてても泣きわめいても放置してもらえてよかったじゃない! 泣いたら閑に庇ってもらえてよかったじゃない! 閑の関心をいつも全部持っていくのは、琴音の方でしょ⁉」

 最後は怒鳴り散らすような声だった。可乃子は大きく、荒く息を吐く。
 琴音は、可乃子がそんな風に思っていたことに初めて知って、半ば呆然としていた。

 数秒、沈黙が続く。お互い息を整える。こんな風に、腹の奥まで晒し合うような喧嘩をしてしまったら、もう二度と昔のようにはなれない気がし始めていた。

 それでも、譲れないのだ。今回だけは、引き下がれない。沈黙を破って、琴音が静かな声で言った。

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