身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

「可乃子とふたりで会うつもりなんだろうとは思っていたんだ。姉妹なんだから、少し腹を割って話した方がいいのかもしれないと思っていたんだが……」

 閑が、後悔しているように眉根を寄せる。その表情が怖くて、琴音は震えた。閑に聞かれてしまったことが怖くて。

『――だって、たとえ、私自身が望まれたんじゃなくても、結婚は、しないと、いけなくて、それに』

 違う。いつか、閑に伝えたいと思っていた自分の気持ちはそれじゃない。日々過ごすうちに、積もって積もって溢れそうになっていて、いつか言えたらと思っていた気持ちはそれじゃない。

「違う、違うの」
「琴音?」
「しないといけないから、したんじゃなくて」

 これでは言い訳みたいだ。だけどそれ以上、言葉が出なくて唇が何度か開き、声を出せずに閉じてしまう。ひくっと喉が引きつったとき、頬を撫でていた閑の手がそのまま琴音の後頭部に回り、引き寄せた。

「大丈夫だ、わかってる」

 琴音の頭を肩に乗せて、閑は優しく琴音の背中に手を回し、ゆっくりと撫でた。
< 221 / 239 >

この作品をシェア

pagetop