身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
* * *
「閑さん……そーっと……そーっと」
腕の中でようやく寝息を立ててくれた晴花を、出来る限り振動を与えないようにベビーベッドに下ろす。
そこで一度、琴音と目を合わせる。大丈夫そうだ、とふたりで頷きあって晴花の背中からゆっくりと腕を引き抜こうとした。
ここが、一番の難所だ。
ず……ず……、と何段階かにわけて、晴花の寝顔を確認しながらどうにか最後まで腕を抜き、ほっと息を吐く。すぐ横で琴音の吐息も聞こえた、その時だった。
ぱちりと瞼が開いて、つぶらな黒い瞳とばっちり目が合った。
「ふ……」
途端に、晴花の表情が可愛らしい泣き顔へと歪んでいく。
「ふぎゃ、あああああん」
「……ダメか」
琴音とふたり、ベビーベッドの柵を掴んでがっくりと肩を落とす。
生まれてから五か月。晴花はどうやら抱っこされたまま眠るのが好きらしい。ベッドに下ろした途端にいつも目を覚ましてしまう。最近、この現象に悩まされていた。