身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
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 結婚の予定まで、あと半年だ。それまでに距離を縮められるよう、それにプラスして、花嫁修業もしなければならない。
 そう、花嫁修業だ。二宮家の嫁としてしなければいけないことは、追々閑や二宮の両親が教えてくれるはずだが、それまでにせめて普通の主婦として家事能力くらいはアップさせておかねばなるまい。
 というのも、掃除洗濯はいいとして、琴音は料理がそれほど得意ではない。一応、学校の調理実習で教わる程度のことはできるし、レシピを見ながらその通りに作ればどうにかなるとは思う。

 だが、普段が忙しすぎてほとんど自炊しないため、まったく慣れていないのだ。レパートリーも、レシピを見ないで作れそうなものといえばカレーライスかシチューくらいしか思いつかない。もちろん、市販のルーを使って。

 ……料理教室くらいは言っとくべきかもしれない。

 そのためには、まず仕事をどうにかしなければならない。そう決意して、上司に退職願いを申し出たのだが。
 そう簡単にいくはずがなかった……と悟った琴音が遠い目をするのにそれほど時間はかからなかった。

「福住さん! 私本当に、辞められるんですよね⁉」

 忙しさがピークに達し、殺伐としたオフィスの中に複数のキーボードの音が響いている。
 一月に入ってから始動したプロジェクトが思うように進まない。上司でありプロジェクトリーダーでもある福住に、半年後に結婚の予定があるのでできれば三か月くらいで退職したいと相談し、はや、三か月。未だに退職の目途が、立たない。

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