身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「染谷ぁ……そう簡単に辞めれると思うなって言ったよな!」
どこのヤクザだ! と琴音は言いたい。
福住のその悪役セリフは冗談めかして聞こえるのだが、現状、琴音がいなくなったらプロジェクトがままならなくなるのは、よく理解していた。このチームにせめて琴音が抜ける分の人手が入らないことには、どうにか今の仕事を無事に納めても、次の仕事が回らなくなる。
福住が悪いわけではないのだ。人事はそう簡単に増員はしてくれないし、プロジェクトが予定通りにはいかないこともいつものことだ。
そうすれば、どうしたって納期に間に合わせるには今いるメンバーが各々負担するしかなくなる。ブラックな勤務状況ではあるが、納期を間に合わせるにはそうするしかない一面を抱えていた。
「何言ってんですか、辞めますよ私は! ちゃんと人事には通してくれてますよね⁉」
せめて今のプロジェクトが終わるまでは待て、と言われて三か月。本当に辞められるのか、怖くなってきた。新しいプログラマーが入るという話もまだ聞こえてこない。