身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

「結婚は六月だったな?」
「まさかギリギリまで働かせる気じゃ……」

 鬼気迫る福住の顔に危機感を覚え、愕然と見つめれば親指を立てられたので、さっと目を逸らして逃げた。

 オフィス内の事情はよくわかっている。自分もずっとこの環境でやってきたのだから、人が抜ければ他のチームメンバーに負担がかかることを考えれば、心苦しかった。
 けれど、琴音の退職が、この現状を福住より上の立場の人に伝えるきっかけになれば、とも思う。
 はあ、と疲れたため息を落とせば、とんとんと隣のデスクの同僚に肩を叩かれた。

「大丈夫よ、みんなわかってるから。おめでたいことだしね。福住さんもちゃんと上に掛け合ってたよ。この仕事を納品したら、後はなんとかなるから」
「三輪ちゃん……ありがとう」
「私だっていつか結婚したいしね! 染谷さんが先陣切ってくれたら、私もその時言いやすくなるかなって。ただちょっと、送別会は先になるかもぉ」

 気持ちだけで嬉しいから、と首を横に振って笑うと、仕事を再開した。
 閑との結婚を前に、心の準備もしていくつもりだったのに、仕事の問題だけですでにいっぱいいっぱいだった。

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