身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
――あ、あれ? やっぱり何か、怒ってる?
「あの……あ、ちょっと待って。今、鍵を開けますから」
バッグにふたたび手を入れて、家の鍵を引っ張り出した。急いで閑に近づいて、玄関の鍵を開ける。
初めて、男の人を家に上げるのだ、ということをちらりと意識してしまったが、それよりももしかしたら長く待たせたのかもしれない申し訳なさの方が勝った。
ドアを開けて、彼を促して一緒に玄関内に入る。背中でドアの閉まる音を聞いて初めて、とても狭いスペースにふたりで立っていることに気が付いた。
俯いていると、ローヒールを履いた自分の足と、彼の革靴が目に入る。やはり、近い。トクトクトク、と高鳴り始める心臓を深呼吸で静めていると、頭の上から溜息が聞こえた。
「……帰りは、いつもこんなに遅く?」
「はい、大体は……もっと遅い時もあるけど」
現在、21時を回っている。本当は会社に泊まり込んでるときもあるのだが、それを今言ったらまずいような気がして、琴音はそっと飲み込んだ。
「どうぞ、上がってください」
そこでやっと顔を上げると、すぐ目の前に先ほどよりも一層目を眇めた怖い表情で、見下ろされていた。