身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
――やっぱり、でか。
見上げながら、そう思った。琴音が百七十に若干届かないくらいの長身だから、これほど見下ろされることは滅多にない。再会した日も思ったが、こうして至近距離で立つと余計に閑の背の高さがよくわかる。おそらく、百九十くらいはあるんじゃないだろうか。そして怖い。迫力がある。
「今日、これでも早いくらい? これよりもっと遅い時は?」
「え、いえ早いんじゃなくていつもこのくらいで」
「遅い時は?」
「……えー……終電くらい?」
これは。泊まり込みまでしてるとはやはり、絶対、言ってはならない。
なぜなら、ますます閑の眉間の皺が深くなったから。
「あ! いや、でもね! 仕方がないの、仕事のシステム的にどうしても……私だけじゃなく上司もみんな、そうだし。それに、ちゃんと退職したいってことは言ってあるから!」
だから、心配ないから、と拳を握って力説したが、冷ややかな声で一蹴された。
「そういうことを言ってるんじゃない」
あまりにも厳しい声で、琴音の肩はびくりと跳ねる。