身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「連日こんな時間まで働いて、身体を壊さないわけないだろう。忙しいとは聞いていたけど、こんな働き方をずっとしてきたのか?」
「それは、そうなんだけど……仕事だし、納期あるし。どうにも仕事が回らない状態で」
労働基準法だとかで色々と引っかかるには間違いないのだが、それを口に出したところですぐさまどうにかなる状況でもないのだ。琴音が上層部に掛け合えるくらいに発言力を持てていれば良かったが、そこまでいくにはまだ遠い。
びくびくしながら言い訳をして、閑を見上げる。彼はやはり怖い顔でしばらく黙っていたが、大きく深呼吸をしたあとでようやく表情が和らいだ。
「疲れてるところに、悪かった。とにかく、少し話をしよう」
そう言ってくしゃっと琴音の髪をかき混ぜる。
「うん。ありがとう、来てくれて」
おそらく、琴音を心配してくれているのだとそれは伝わって、照れくさいような気持ちになる。はにかみながら笑ってそう言うと、気の抜けた笑みを浮かべた閑にぴんと額を指で弾かれる。くすぐったい感情を抑え、彼の足元にスリッパを差し出した。