身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 こんな人の隣に並んで大丈夫なのか、自分。今日もだけれど、披露宴が心配で仕方がない。

「どうしよう……普段、あんまり鮮やかな色って着ないし」

 白以外でもいい、と言われたものの、自分に何色が似合うのかぴんと来なかった。白とか黒、紺やベージュ……自分が持っている服で多い色はそんなところだろうか。

「無難な色がいいかな」
「そんなこと言わずに、どれでも試着してみればいい。琴音は自分に自信がなさすぎないか?」

 苦笑混じりにそう言われたが、閑の横に並ぶのに自信などあろうわけもない。

「こちら、どうですか? きっと似合います!」

 店長の手にあるのは、背中が大きく開いた大胆なドレスだった。

「せ、セクシーすぎます!」

 ぶんぶんと顔を横に振る。肩から腰までⅤ字になっていて、背筋はもちろん肩甲骨まで見えそうだ。背中の大部分を晒すことになりそうなドレスは、綺麗だけれど着るにはかなりの勇気が必要だ。
 それに、やっぱり琴音としては落ち着いた雰囲気のドレスの方がいい。遠慮でもなく、好みの問題であり、気構えでもある。
 ただのパーティではなく、結婚披露宴なのだ。粛々とした気持ちでいたかった。

「そうですか? お客様、ほっそりされてるので肩甲骨も綺麗に出そうで、きっとお似合いですけど」

 残念そうに店長はドレスをラックに戻す。どうも彼女は、琴音に大人っぽいデザインのものを進めたいらしい。

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