身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 ――どうしよう、なんか、ドレスを選ぶどころじゃない。

 恋愛感情の存在しない結婚だから、もっとゆっくりとお互いに気持ちを育てていくものかと思っていたのに、やはり相手が初恋である琴音の分が悪い。些細なことを、つい意識してしまう。

 次々とドレスに目を向けながらも、狼狽えてしまいろくにデザインも見ていない。そうしている間に、店長と閑が話しを進めていた。

「でしたら、肩の部分にレースを使ったデザインなどはどうでしょう? 肌の透け感があって華やかで、披露宴にもぴったりかと」
「ああ、いいな」
「色はどうしましょう?」
「肌が白いから、濃色が映えそうだと思う。けど、白も捨てがたいな……」

 言いながら閑が濃赤色や紺、それから白といくつかのドレスをピックアップし、片手をジャケットの内側に入れた。
 どうやら、着信があったらしい。スマートフォンを確認すると、続けて言った。

「後は、彼女の好きな色で。琴音、少し外に出てくる」
「はい」

 頷いて閑を見送ると、やっと肩の力が抜けた。


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