身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
俯き加減の視界に、閑の足元が映る。ほんのわずかな間の沈黙に耐えきれず、聞いた。
「ど、どうかな?」
期待と不安を滲ませながら視線をあげる。閑の顔が目に入ったとき、驚いた。彼は無表情のまま目を見開いていて。
「へ、変?」
慌てて聞いた琴音に、閑もぱっと表情を取り繕って答える。
「変じゃない。……似合ってる。驚いた」
目を細め、口元を緩める彼の声音はとても優しく、琴音の耳はかあっと熱を持った。
「お、驚くって失礼じゃない?」
「……大人になったなあと思って」
「大人ですー。閑さんとふたつしか違わないし」
しみじみとした閑の言葉に、照れ隠しでつい口を出たのは、あまのじゃくな言葉だ。閑が数歩近づいてくる。くすくすと店長が笑いながら、小さな爆弾を落とした。
「染谷様ったら、可愛らしいんですよ。少しでも二宮様に綺麗に見られたいから助けてください、なんて」
「なっ、なんで言うんですか⁉」
は、恥ずかしいから閑ちゃんがいない時にお願いしたのに⁉ しかも、『誰に』とは言わずにいたはずなのに⁉
耳どころか真っ赤になって顔をあげられなくなった。じとっと店長を睨むと、彼女は相変わらず微笑ましいものを見るような目で、口元は手で隠している。
肝心の閑はといえば、黙ったままだ。変なことを言われて、困ったのかもしれない。泣きそうになっていると、閑がまた一歩進みすぐ傍まで近づいて、琴音の視界に大きな手が入り込んだ。