身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「よく似合ってる」
閑の手は、琴音の背に添えられたままだ。閑の背は琴音よりずっと高いが、さすがにヒールを履けば追いついてしまい、自分が大きく見えるのが嫌だった。実際、確かに目線の高さは近くなっている。
けれど、決して、琴音が大きく見えるわけでもなく、広い肩幅の閑に寄り添われると寧ろ華奢ですらりとさえ目に映った。
「ちょうどいいくらいだな」
「そう、かな?」
横を向いて、鏡ではなく直に閑と見つめ合う。身長差が少なくなり、いつもよりぐっと顔が近く、思わず上半身を掲げて距離を作ろうとしてしまう。けれど、腰近くにある閑の手の指にくっと力が入り、邪魔をされた。
「色は白がいいのか?」
「う、うん、白がいいかな……でも、他のも着てみたい」
「いくらでも」
囁くようにそう言われて、じわりと目元が熱くなる。
閑が、身長のことをそう言ったのかはわからない。もしかしたら、ドレスのサイズのことだとか、デザインのことだったのかもしれない。けれど琴音には、身長を発端に琴音が持つ自信の無さそのものを、否定してくれたように聞こえた。閑と自分が『ちょうどいい』のだと言ってくれているようで。
少しだけ、隣に並び立つことの不安が和らいだ気がした。