身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「ご無沙汰しております、おじさま」
琴音が優子に抱き着かれたまま言うと、彼は目尻を下げて微笑む。その微笑み方を見て、閑は父親似なのだなとふと思った。きっと閑が年を重ねれば、こんな微笑を浮かべるのだろう。
「琴音さん、大人になったね。見違えたよ」
「そうでしょうか、染谷の両親にはいつも落ち着きがないって怒られます」
肩を竦めて冗談交じりにそう言うと、彼は声を上げて笑った。
「染谷は厳しすぎる。もっと気楽に来てくれて構わないんだから。優子、いつまでも抱き着いてないで離れなさい」
その言葉でようやく琴音は解放される。早く中へ、と優子に手を引かれて座敷へ向かう途中、隣に来た閑がぼそりと耳打ちをした。
「な? 俺のことなんかそっちのけで、心配いらなかっただろ?」
「……うん。びっくりした」
その囁きに笑って頷く。閑の言葉を疑ったわけではないが、まさかここまで諸手を上げて歓迎されるとは、思いもしなかった。