身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 父の話からすれば、二宮家は既に染谷家との婚姻を必要としていないということだった。二宮と縁がなくなって困るのは染谷の方だと。それなのにこれほど歓迎してくれるのは、本当に昔の約束と縁を大切にしてくれているということだ。

 座敷に通され、使用人と茶の準備をしに行った優子も戻り四人が揃う。改めて居ずまいを正し挨拶を済ませ、それでやっと少しだけ気を緩めることができた。
 横長の座卓の上にはそれぞれの前に湯飲みが置かれている。その隣に、琴音が手土産として持ってきた和菓子が並んだ。

 琴音にとっては義母となる人、優子は本当にふたりの結婚を楽しみにしてくれているようだ。何か話を、とこちらが話題を探す前に優子の方から次々と振って来る。

「そうだわ、ドレスはどうだった? 見に行ったのでしょう? 素敵なのが見つかった?」
「あ、はい。閑さんに連れて行っていただいて……」
「画像は? 撮ってないの?」
「あ! あります!」

 琴音も圧倒されるほどに、優子のテンションが高い。慌ててスマートフォンを取り出した。画像を表示させてから正面に座る彼女に差し出すと、喜んで受け取った。

「あら、綺麗! けど地味じゃない?」
「これにもう少し、レースなんかの装飾をしてもらうことになってて……でもあまり派手過ぎてもと思うんですが」
「何言ってるの、若いんだから華やかにすればいいのよ。ああ、私も行きたかったわ。なのに、閑ったらちっとも教えてくれないんだから」
 
 優子が琴音の隣に座る閑を睨む。見れば、閑の方も眉を寄せて思い切り嫌そうな横顔だった。

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