身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
 彼女は和箪笥の下から二番目の引き出しを開けると、その中からたとう紙に包まれた着物を取り出した。

「これをね、琴音ちゃんにもらってほしくて」

 樟脳の匂いがふわりと空気に漂う。

「わ……きれい……」

 淡い薄桃色の地に、流水と花をあしらった着物だった。

「訪問着なの。これから着る機会もきっとあると思うしね」
「素敵です。けど、いいんですか?」
「もらって欲しいのよ。娘がいたら、そうしてたわ」

 汚してしまわないだろうか、こっそりと手に汚れがついていないか確認してから、そっと生地に触れてみる。さらりとした手触りが心地よい。琴音には着物のことはわからないが、それでもかなり良い品なのだと感覚で伝わってくる。
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