身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「あれ、おばさまが言ってたこと、本当に良かったの?」
後少しで琴音のマンションに着く。『あれ』とは、夕食の席で優子が式当日は本宅に泊まって欲しいと言ったのを、閑が無碍に断ったことだ。
「俺が嫌だ。同居するわけでもないのになんで初っ端から実家泊って、ないだろ」
「う、うん、まあ、確かに……びっくりしちゃった」
考えれば、閑の両親は祖父祖母と同居だった。そうして当然という家柄だったのだろう。
そんな閑の両親が、別居を許してくれただけでも感謝すべきなのかもしれない。そう思えばとてもじゃないが断れない、という心境だった琴音を他所に、閑はきっぱり言ったのだった。
『当日はホテルに泊まる。翌朝から新婚旅行だし、その方が都合が良いから』
『えっ! わざわざ宿泊しなくてもうちで……』
『もう部屋取ってあるから無理』
琴音も驚いてしまい、フォローの言葉も出ないほどだ。けんもほろろと言った様子で、優子の干渉をシャットアウトしていた。
思い出して苦笑いをしていると、車が間もなく琴音のマンションの前に着く。車を停車させてサイドブレーキを引くと、閑は上半身を少し琴音に向け、首を傾けた。
「今日はお疲れ様」
「うん。閑さんも」
「母さんのあれは、ほんとにまともに取り合うな。テンション上がってるだけで、父さんもわかってるから適当にあしらって大丈夫」
「あはは。……うん、わかった」
姑となる人の押しが強いのは、少々、いやかなり不安に思った今日一日だった。けれど、閑がわかってくれているだけで、随分楽に受け止められる気がした。
本当に、結婚を喜んでくれている。琴音を歓迎しようと、あれこれと考えてくれている結果なのだ。