身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「来週から出張で、それからしばらく忙しくなる」
「うん……あ、五月から、私は実家に」
「ああ」
四月に入り、これから式までのあいだ閑の仕事が忙しくなるということは、既に聞いている。そして、琴音は今住んでいる部屋を引き払い、五月から実家に戻ることが決まっていた。
母親に、一ヵ月だけでも花嫁修業に帰って来いと言われたのだ。琴音の実家は閑の職場や自宅から車で一時間以上かかる。
この頃、休日は結婚の準備や話し合いで昼間に会い、平日の夜は閑に時間があれば一緒に食事に出かけたりした。ようやく、婚約者らしく会うことに慣れ始めていたばかりだというのに、これではしばらく会い辛くなる。
「うちのお母さんも、言い出したら聞かないから」
ぶすっと拗ねたようにそう言うと、閑は笑った。
「どこの母親も同じなのか、俺たちの母親が似てるのかどっちだろうな」
「……両方かな?」
琴音も笑うと、閑の手が琴音の頭の上に乗る。髪を撫でて耳の近くでその手が止まった。