身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「一生に一度のことだから。家からちゃんと嫁に出したいってことなんだろう。わかる気がするよ」
「そう、かな。ありがとう」
「時間を見つけて会いに行くから」
閑の言葉なら素直に聞けるから、不思議なものだ。頷くと、閑の手の指先に力が籠り、琴音の顎が少し持ち上がる。
ああ、キスだ。と、流れがわかるようになった。
しっとりと、唇の肌を重ね合わせる。それから上、下と唇を順に啄んで、離れた。
「おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
習慣になった別れ間際のキスは、とても優しく穏やかなもので。何度繰り返しても、それ以上深くなることはないし、初めてキスした時のような熱に煽られることもない。
子供を期待されていることが、ちらりと頭に過ぎる。けれど、もしかすると閑はそれほど焦ってはいないのかもしれない。
そう思うほど、彼は夜に琴音と会う時はいつも外で、ただ食事をするだけだ。送ってくれても部屋にあがろうとすることもない。
ほっとするような、少し残念なような、複雑な気持ちだ。
「じゃあ、気を付けて帰ってください」
名残惜しい、後ろ髪を引かれるような気持ちで、琴音は車を降りた。