身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
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五月からは予定どおり、実家にて花嫁修業に勤しんでいる。
ゴールデンウィーク中に、社会人になってからずっとお世話になったマンションを引き払った。結婚後も使う衣服や身の回りの物は箱詰めして閑のマンションに送らせてもらい、家具と電化製品はほとんど処分した。
閑はずっと忙しそうだったから、引っ越しの日は業者と琴音だけで大丈夫だと言ったのに、実家に送り届けるくらいはさせて欲しいと時間を作ってくれた。
それから二週間。閑とは会えないものの、連絡は毎日メールか電話で寄越してくれる。
仕事が終わったあとがほとんどだが、たまに休憩中や思いもよらない時間帯にメールが来ることがある。だから、琴音は以前では考えられないくらい、スマートフォンを離せなくなった。
別に、すぐに着信通知に気づかなくて閑が怒るわけでもない。ただ単に、琴音が気になって仕方がないだけ。
「まったく、あんた魚もろくにさばけないで本当に大丈夫なの?」
「だから料理教室に通い始めたんだってば」
メニューは、カレイの煮つけと野菜の揚げびたし、味噌汁と酢の物という純和食。母親と一緒にキッチンに立ち、今日の夕食を作りがてら料理指南を受けている。
魚はいつか捌けるようになれたらいいが、当面は切り身を買うのでいいかなと思っている。と言えば、小言がまた増えそうなので、敢えて口には出さない。
キッチンカウンターの隅に置いたスマートフォンに、ついちらちらと視線が向かった。