身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「カレイなら簡単だからこれくらいは覚えて……ほらよそ見しない!」
「見てます。ちゃんと見てます」
さっと母の手元に視線を戻し、きゅっと表情を引き締める。母親は少し呆れたような表情を浮かべながらも、ふたたびカレイの鱗取りを始めた。
母親の小言にちくちくとやられながら、もう一尾のカレイを手に取り始めて魚を捌く。その後も調味料の加減や手順など、教えてもらいながらどうにかすべてのメニューを作り終えた。
「出来たぁ……」
どっと疲れて、深々と息を吐く。同じくらい深く長い溜息が、隣の母親からも聞こえた。
「……なんとか出来たわね。時間がかかり過ぎだけど……まったく、三十にもなろうという女がこんなに何にもできないなんて」
「ちょっとくらいは褒めてくれてもいいでしょ? ここまでしっかりした和食を作るの初めてなんだから」