身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「閑さん? ごめんなさい、電話に出られなくて」
『いや。忙しかった?』
「お母さんに料理を教わって、怒られてました」
そう言うと通話口からくすりと笑う声が聞こえた。それと同時に、何か紙を捲るような音もしていることに気づく。
「ごめんなさい、仕事中でした?」
時間は十八時を過ぎたところだ。さっきの着信は、きっと仕事の合間にかけてくれていたのだろう。
『ああ、いや。今は帰りの車の中だ。ちょっと資料を見ているだけだ。……今夜は、いつもより早く終われた』
「良かった。閑さん、このところ忙しすぎだから」
『だから、少し……顔を見に行けたらと』
閑にしては珍しく、語尾が弱い。平日の夜、明日も仕事だ。本当なら家に帰ってゆっくり休むべきなのに。
照れくささを滲ませた閑の声に、きゅんと胸の奥が苦しくなってブラウスの胸元を握りしめた。