お願いだから、俺だけのものになって

(☆奏多side)

「あいつ
サッカー部のキャプテンじゃん」



剣道部に絡まれた
美紅を見たとたん

俺にくっついている
女の子二人を振り払い

美紅の方に走り出していた



でも・・・



3歩くらい走り
俺は立ち止まってしまった



あの女子に人気で
ファンクラブまである
サッカー部のキャプテンが

美紅の腕をつかみ
連れ去っていった



「かー君、どうしたのよ?」



一緒にいた女の子たちが
ブーブー何かを言っているが

全く俺の耳に届かず
その場に立ち尽くすことしか
できなかった



なんで・・・



夏樹先輩なんだよ・・・



「ごめん、オレ、先帰るわ」



俺は
現実が受け入れられず

その場を走り去った




せっかく美紅が
俺を待っててくれたのに・・・


マフラーを返しに
来てくれたのに・・・


あの時・・・


無視しなければ良かった・・・




俺は昔から
女とおしゃべりしたりするのが
好きだ



来る女拒まず
去る女追わずが
俺のモットー



誰かを本気で
好きになったことなんて
1度もないし

一緒にいて楽しければ
好きじゃなくても付き合えた



だけど
美紅は違った



笑った顔が可愛くて

もっともっと
笑わしてあげたいって思った



俺のこと
好きになって欲しいって
本気で思った




だからさっき

急に美紅が俺の学校まで
会いに来てくれたのに

女好きみたいな姿を見られて
動揺したし

俺に付きまとう女たちが
嫉妬して美紅に
何かしないかとも思って

美紅を無視してしまった



俺が通り過ぎるときに見せた
美紅の悲しい表情・・・



もう美紅に
あんな顔させたくないって
思ったから・・・


だから

剣道部に囲まれた
美紅を見つけた時には

俺が助けなきゃって
思ったのに・・・




よりによって
美紅を連れ去ったのが

サッカー部の
キャプテンとはな・・・




女子に人気の夏樹先輩は

告白されても
『ずっと好きな子がいるから』と
断っているらしい



それは多分
美紅のことだ



あの先輩に
俺は勝てないだろうな・・・
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