【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「……はぁ、灰野くん」
息が苦しい。熱い。
顔もすっごく熱い。
「ごめん……我慢して」
我慢って、何?このご褒美みたいな状況のこと?
それとも、こんなに近くなんだから、灰野くんの顔だって見てみたい。
そう思っていること?
おそるおそる上げた視界のど真ん中にいるのは、顔を背けている茶髪の彼。
教室内の光ごしだからよく見える。
「灰野くん」
掠れるような小さな声で名前を呼ぶ。
「しぃっ」
灰野くんは両方の手をまっすぐに下におろしていて、あたしに一切触れない。
壁みたいな胸板に、頬がひっついたあたしの両手は、窓に貼りついている。
N極同士でも、こういう事故があればひっつくんだ。
心臓、壊れると思う。
というか、灰野くんの心臓もめちゃくちゃ速いの。
ドクドクドクドクって、尋常じゃなくて。
それがあたしの心拍数を余計に増やす。