【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

「やば!」


灰野くんはあたしの腕を咄嗟に掴んだ。


う、わぁ、灰野くんに手引かれてる……!

窓側に走っていく。ふわりとあたしの髪が宙に流れる。


「ここでいいや……!」


灰野くんの手が窓の方へと伸ばされて。


暗幕のようなカーテンの端を手探りであけた灰野くんは「入って!」とあたしを入れる。


カーテンと窓の間に身を隠したあたしたちを、ほこりっぽい匂いが包んだ。


間一髪のかくれんぼ……なんだけど……っ。


ガラッとドアのあく音がして、田島先生の腹立たしいと言わんばかりの声が部屋中に響く。


「おい!だれかいるのか!?」


パチンと、問答無用に電気がつけられた。


まぶし……。


カーテンが動いたら一発アウトなあたしたちは一ミリだって動かないように固まる。



心臓がはれつしそう。


かくれんぼの鬼が怖いからとかそういうことじゃない。



先生もっとそこにいて。ずっとでもいいよ。



だってあたしは、今。

灰野くんの胸にぴったりとくっついているんだから……!


な、なんでこんなにいい匂いするの?


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