【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
空っぽの教室。

あたしが一番乗りだ。

冷房のスイッチを入れて、灰野くんの席経由で席に着く。


ナギちゃん、今頃告白されてるんだなぁ。


いいなぁ、モテて。


一瞬そう思ったけど、そう思っちゃいけないか。


ナギちゃんは辛い恋をしているんだから。


モテた喜びも中和されていそうだ。




ナギちゃんはモテる。同じくらい灰野くんも、ずっと告白を断ってきたのに。

どうして藤堂さんだけは、よかったんだろう。


何が違ったのかな?


藤堂さんって、どういう人なんだろう。


ちらっと、灰野くんの席を見る。

吸い寄せられるみたいに、席に近寄って。

あたしはその机に触って見たくなって。


椅子を引いて、ついに座ってしまった。

冷房がありったけの力で部屋を冷やす風音に混ざってドキドキと心臓が動いて。


だけど、まだ座っていたくて。


いつもここから黒板を見る灰野くんの横顔を思い出す。



机に突っ伏してしまいたくなった。



突如襲い掛かる背徳感。だけどしがみつきたい相反する気持ち。


―――ガラッ。


ドアが開いた瞬間。


反射的に「ごめんなさい!」と立ち上がった。


< 172 / 400 >

この作品をシェア

pagetop