【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「ようするに藍田さんは伊吹と並んで歩きたいんだよな?」
いきなり、山本がまとめはじめたんだけど。
「え、うん!」
こくこくと首を縦に振る藍田さん。
ああ、うん。俺もそう。
「先に進んじゃった伊吹を知って、寂しくなっちゃんだよな?」
「う……うん」
まぁ、それは、わかるけど仕方ないことっていうか。
「つまりなぁ、セックスしたいんだって!」
おいこら、殺すぞ。
「せっ……ちが!やまも、……、ちがうー……っ!」
声にならない声で両手を顔で覆う藍田さん。
「うっわ、かわい。その顔伊吹に見せてやったら?」
手を顔から剥がそうとした山本に、藍田さんは
「……っやぁ」
と鳴いた。
なんでそんな声を、今、他の男の前で出す?
「まじで離せ、散れ!消えろ!」
山本をぶん殴る勢いで引き剥がした。
「……その顔絶対誰にも見せたくない」
本心が声になって出てるのも気づかず、俺は藍田さんの顔を覆い隠すようにぎゅうっと抱きしめていて。
「山本と灰野―――ぉぉおおお?なにやってんの!?」
たった今教室に入ってきた佐藤の声で離れそうになったけど、意地でも離さないから。
藍田さんのこんな顔、誰にも見せない。
「空気読んで……」
渾身のひとことを零した俺を山本はプッと笑ってから
「邪魔ものは合コンいってきまーす」
と佐藤の背中を押して教室から出て行ってくれた。
くっそむかつくけど、どうもありがとう。