【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

「……あ、の、灰野くん」

「ん」

「もう誰もいないけど、離さないの?」

「……まだだめ」


今、めちゃくちゃ離したくないから。


「ドキドキ言ってる」


だから言わなくていいよ、そういうこと。


「藍田さんといたら、いつもこうなんだって……俺は」


かっこ悪くてごめんね。
僕壊のヒーローみたいに強く引っ張れない呪われた彼氏で、ほんとごめん。


「……この激しいドキドキの音聞いてるとき、一番幸せ」


いちばん?こんなんが?

もっと幸せなことっていっぱいあるんだけどね。


放課後の教室をオレンジ色が包んでいく。カキィーンと遠くから野球の音が聞こえる。なんか、ノスタルジックで……。


って気を、紛らわせようとしても、心臓が破裂しそうで。


「ね、灰野くん。中学生の時、ぎゅうって抱きしめてくれたの覚えてる?」

「うん」


ナギに告白された藍田さんを、どうしても離したくなくて。
ぎゅうっと抱きしめた。


「あの時あたしなんていったんだっけ?」

「え」

「あたしが何か言って、それで ” ごめん! ”って灰野くんが離れちゃったのすっごく印象的で 」


……そういう、ダサいことをいちいち覚えてる藍田さんが本当にやだ。

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