【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

「……覚えてない」

「そ、そうだよね」


俺はぎゅうっと藍田さんを抱きしめた。


もう昔のことなんか全部塗り替えてしまいたい。


覚えてるよ。あの時は。


ぎゅっと抱きしめたら藍田さんは「かたい」って言ったんだよ。

当たった気はしなかったんだけど。

そりゃ好きな子はじめて抱きしめたら、そうなるだろ。俺男だし。

だから俺は弾き飛ばすレベルで藍田さんから離れた。

『ゴメン!!』


……そう叫びながら死にたくなった。


「あ……思い出した!」

「おもいださなくていいから!」

「え……でも思い出しちゃったもん……。初めてぎゅってされて、」


もうその口塞ごうかな。

ぎゅうっと抱き寄せる。

「んむっ」


声、可愛すぎかよ。


「も、苦しいよ……っ」


じゃあ、ちょっとくらい緩めてやるけど。

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