【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
映画は感動的フィナーレだった。


藍田さんは濡れた睫毛で笑いながら、「もう一回観たくなっちゃった」って、大好評だな、僕壊。


こんなの二回も見るのかよ。


「じゃあまた今度一緒に来る?」

俺が聞くと、「いや……そんなのは申し訳ないし、リホちゃんたちと……」って。


なんで遠慮するかなぁ……。



でもリホたちとも行きたいのかもしれないし。

いつもお互いに気遣ってばっかりだよね。俺たちは。


「どのシーンが一番よかった?」


話を変えた俺に、藍田さんは「ええと」と考え込んでふるふるっと首を横に振って俯いて。

なに、その可愛い一人芝居?


どうせベッドシーンだろ。一番甘い言葉を言っていたと思うから。


「最後のキスシーン……」

「あ、そっちなんだ」


意外とノーマル。


「灰野くんが映画館でしてくれたキスと同じだったよね……ドキドキしたぁ……っ」


「あ……そ」


そういうこと、言わなくていいから。


途端に頬が熱くなっていって。


帰り道の俺は、手のひとつも繋げずにギチギチとした空気を作り出す、ただのヘタレに成り下がっていた。
< 339 / 400 >

この作品をシェア

pagetop