【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「お礼に一緒に写経でもするのかな……」
そもそも写経って、何?
「写経なんかしないけど……」
「あれ……声に出てた?」
こくっと小さく頷いて灰野くんは付け足した。
「お礼って、別に色気あるものあげるわけじゃないよ。写経ハマってるっていうしそれの筆かな」
「筆?」
「うん、あいつ書道部だから」
……あいつ。
ぐっと下唇をかみしめた。
あたしのことは、ずっと藍田さんで、あいつなんて言われたこときっとないと思う。
うん、絶対言わないでしょ。
それに、灰野くん。
どうしていつも、あたしといるときは、そんなに固い顔するの?
どうしたら笑ってくれる?
他人行儀じゃなくなる?
もっと、普通に扱ってくれる……?
あたしと、藤堂さんは、どこがそんなに違うの?