【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。



結局あたしたちはこの夏休み、あれ以上距離が縮まることはなかった。

9月、まだまだ暑い2学期初日の、放課後。


「えー?どうしたら距離が縮まるかってー?」


リホちゃんと彗とあたしでガールズトーク(真剣)をしている。


「いっぱい喋ればいいじゃん」

彗はアイスを咥えながら簡単に言うけど。


「まずそんなにいっぱい会話が続かない」


前みたいに「あの」と「えっと」が続いて空気が凍ることはさすがに減ったけど。


「もっと、普通に会話したいの……」


「ふぅーん。胡桃ちゃんいいこと教えてあげる。あれ見てよ」


リホちゃんはすっと窓の外を指をさした。


その先の校庭には二組のカップルが、それぞれベンチに二人きりで座っている。


「右のカップルはぴったんこでベッタベタ、左のカップルは適切な距離感。この差はどうして生まれたと思う?」

ええっと。

「……付き合った期間?」

「ぶっぶー。あの二組は両方夏休みラブだから時期は大してかわんない」


なんで知ってるんだろう。


「あの二組の差は、体の関係の有無」


「……」


え?!


「そんなんで差がでるの?」

彗も疑問をぶつける。


「胡桃ちゃんも肌と肌重ねて見たら?一気に進展するんじゃない?」


「そ……そんな……」


できるわけないよ……。


「付き合ったばっかりだし」


「そう?早すぎもしないと思うけどなぁ。出会って14年だよぉ?」


「14年……っていっても……」


でも、そんなの、絶対無理。


「灰野くんは藤堂さんとはしたわけでしょ?藤堂さんと距離感どう思う?」


「うう、すっごくちかい……」


泣きたくなるよ、それ。


「リホおもしろがって言ってない?」


「ばれたー?彗もっと声落として」


「適当なこと言ったでしょ?」


「うふふふ」


なんて二人の会話、あたしには全っ然聞こえてなかった。



< 352 / 400 >

この作品をシェア

pagetop