【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
◇
結局あたしたちはこの夏休み、あれ以上距離が縮まることはなかった。
9月、まだまだ暑い2学期初日の、放課後。
「えー?どうしたら距離が縮まるかってー?」
リホちゃんと彗とあたしでガールズトーク(真剣)をしている。
「いっぱい喋ればいいじゃん」
彗はアイスを咥えながら簡単に言うけど。
「まずそんなにいっぱい会話が続かない」
前みたいに「あの」と「えっと」が続いて空気が凍ることはさすがに減ったけど。
「もっと、普通に会話したいの……」
「ふぅーん。胡桃ちゃんいいこと教えてあげる。あれ見てよ」
リホちゃんはすっと窓の外を指をさした。
その先の校庭には二組のカップルが、それぞれベンチに二人きりで座っている。
「右のカップルはぴったんこでベッタベタ、左のカップルは適切な距離感。この差はどうして生まれたと思う?」
ええっと。
「……付き合った期間?」
「ぶっぶー。あの二組は両方夏休みラブだから時期は大してかわんない」
なんで知ってるんだろう。
「あの二組の差は、体の関係の有無」
「……」
え?!
「そんなんで差がでるの?」
彗も疑問をぶつける。
「胡桃ちゃんも肌と肌重ねて見たら?一気に進展するんじゃない?」
「そ……そんな……」
できるわけないよ……。
「付き合ったばっかりだし」
「そう?早すぎもしないと思うけどなぁ。出会って14年だよぉ?」
「14年……っていっても……」
でも、そんなの、絶対無理。
「灰野くんは藤堂さんとはしたわけでしょ?藤堂さんと距離感どう思う?」
「うう、すっごくちかい……」
泣きたくなるよ、それ。
「リホおもしろがって言ってない?」
「ばれたー?彗もっと声落として」
「適当なこと言ったでしょ?」
「うふふふ」
なんて二人の会話、あたしには全っ然聞こえてなかった。