【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「究極に押しておいで。胡桃ちゃん」


そんなリホちゃんの声だけが頭に響いている。


誘い方は、全部リホちゃんから学んできた。


「灰野くん……」


とんとんと肩を叩くと、灰野くんはのんびり振り返った。


「……あの、一緒に帰らない?」


「いいよ」


友達にバイバイと手を振る灰野くんはリラックスしてるのにな。


「帰ろ」ってあたしにいう時にはもういつもの感じ。


あたしにはなんでこんなに堅いんだろう……。


「藍田さん、再試大丈夫そう?」

「えっと……うん、多分」

「ほんとかよ」


クスっと笑ってくれるようになった。


けど、あたしが見たいのは、藤堂さんに見せた灰野くんの大笑い。



無表情で隣を歩く彼は、楽しそうになんてちっとも見えないし、


藤堂さんにみせた笑顔なんか、いつまでも見られない気がする……。


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