【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「藍田さん、ちょっと庭の方に出て散歩しない?」


え?お散歩?
あたしと……?


「うん……っ」



まさか、灰野くんからそんなこと誘われるとは思ってもみなかったし、どうして……?


わからないけど嬉しい……。
一気に笑みがこぼれそうになるあたしは、ちょっと単純すぎるかな。



学校の所持しているこの施設から、灰野くんに続いて外へ出る。


さすが山の中。
日差しは強いけど、木陰が多くて風もよく通る。


「涼しいー……」

「うん」


この会話じつは四回目。
会話ってなんだったっけ……。


ちらっと見るお隣の灰野くんがしているのと同じように、色濃く輝いている緑を見上げた。



山の匂いでみたされたここ。短い草をサクサクと踏みながら歩いていく。


つつじは花が枯れ落ちて、紫陽花はまだ蕾も見当たらない。


だけど、緑がきれいで、隣に灰野くんがいて、
これってきっと何度も思い返したくなる思い出になる。


胸いっぱいに空気を吸って、吐き出した。


……おいしい。


灰野くんの隣はやっぱり特別だ。


そう思って歩いていたら。


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