【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

ふぅっと息をついた灰野くん。


「藍田さん、お腹痛いの?」


灰野くんの声が拍子抜けするほど、優しくて、


「え……と。胃がちょっとだけ」


呆気にとられながら返した。

棚からとってきてくれた水と薬を受け取って、固まる。


「あ……」


あたし錠剤がのめない。


「どうした?」

「ううん」

飲み込もう。

……うう。
何回やっても口に残る。


「もしかして錠剤のめない?」

「う、うん」

「……ふ。なんだよ。言えばいいのに」


呆れの混ざった笑いに、やっぱりあたしは戸惑いを隠せなくて。


「粉なら飲める?」


やっと薬を飲めてから。

灰野くんはストンとあたしのベッドに座った。


椅子がないんだから、ここしか座れないけど……でも。


……ちょっとどきどきする。



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