【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
ナギちゃんは、少し後ろを歩いていた灰野くんにくるっと振り返った。
「とか言ってねー。本当は俺、胡桃のこと好きなんだよね」
「は!?何、声大き……、ナギちゃん!?」
どこからつっこんでいいのかわからなくて、全部口にしたあたしに、
「照れてんの?かわいーね」
ナデナデとあたしの頭を撫でるナギちゃんに唖然とする。
「胡桃ってファーストキスまだでしょ。元カレと失敗した話は有名じゃん?」
あたしの背筋は凍って、灰野くんはナギちゃんに一瞬鋭く目を向けて逸らした。
それ、灰野くんが「忘れてほしい」って言った話だよ?
何言ってるの、ナギちゃん。
「俺にちょうだいよ。胡桃のはじめて、いっそぜんぶ」
だから、
「何言ってるの、ナギちゃん!?」
慌てるあたしと、楽しそうに声を弾ませるナギちゃん。
それを見るのは、冷めたまなざし。
「……ラブラブだねー」
灰野くんの声に体が冷えていく。
「やめて、ナギちゃん」
腕を掴んで見上げるのに、「しっ」と彼は笑みを消す。
本気の顔に一瞬で逆らえなくなったあたしは、ナギちゃんから手を離した。
……煽るって、何なの……?