【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「胡桃、こっち見てよ。もう灰野なんかいいじゃん。俺の方が絶対になにもかもうまくやれるよ」
何言ってるの……ナギちゃん?
「ナギなんなの?いい加減むかつくんだけど」
灰野くんはナギちゃんを睨んでいる。でも、ナギちゃんは挑発するような顔で笑っている。
ふと彼はあたしに視線をずらして、手のひらを掴んだ。
「ちょっとこっちおいで」
「何……ナギちゃん……?」
ナギちゃんはあたしの手を引き寄せてグッと距離を詰める。
うわぁ、近いってば……!
渾身の力でナギちゃんの胸を押して一気に後ずさった。
ゴツンと施設の壁に後ろ頭がぶつかって痛い……っ。
「な……ナギちゃ……」
ナギちゃんはにやりと口角をあげて。
「ははっ、胡桃の顔真っ赤だよ」
「っえ、」
たじろぐあたしに詰め寄るのはナギちゃんで……。
「ドキドキしてくれてんの?」
「ちが……し、してない」
「してんじゃん。せっかくこんな近いしキスでもしとく?」
今……なんていった?
「ちょ……っと、ねぇ、どこまで本気で言ってるの?」
「ご想像にお任せ」
「なっ……」
情けない声とともにうろたえたほんの一瞬。